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January 06, 2005

バカよ、まさに同人誌バカ

 googleで「バカ一代」を検索すると58800件、「馬鹿一代」が31000件、「ばか一代」が1800件。なんとこれだけの「○○バカ一代」の元祖が「空手バカ一代」なんですから、梶原一騎のネーミングは偉大だ。印刷物でも「課長バカ一代」とか「浪費バカ一代」とか「手塚治虫バカ一代」とかいろいろ。

 これに新しく加わった「同人誌バカ一代 〜イワえもんが残したもの〜」読みました。昨年3月に亡くなった、イワえもんこと岩田次夫氏の追悼出版です。

 コミックマーケットにスタッフとして参加しその運営改革をなし、いっぽう読者・コレクターとしては同人誌の鬼であるところの著者が、商業誌・同人誌・ネットに書いた評論・エッセイ・レビュー。

 もっとも興味深かったのは2000年に書かれた(インタビューをまとめたもの)「同人誌、その歴史」です。同人誌の歴史を主に資金面から語ったもので、わたしにこういう視点がまったくなかったので、いや、勉強になりました。

(1)古典的な肉筆回覧誌時代
(2)文章はガリ版、マンガは青コピーの時代
(3)高価なオフセット印刷→年会費を取り会誌を会員に通販する形のサークル
(4)1980年ごろから残りを即売会で販売することで、資金に余裕
(5)雑誌のマンガ講座の充実、画材の普及→マンガ作画技術の向上→青コピーの消滅
(6)オフセット印刷をする印刷所の増加とコストの低下→コスト低下に伴う大型・広域型漫研の解体→数人のグループへ
(7)作者と読者の分離=感想を語らない読者の増加
(8)マンガ講座の単行本化、画材のさらなる進歩→全国的なマンガ作画技術の向上
(9)ワープロの普及による編集技術の向上
(10)即売会と通販での資金回収→会員制の崩壊
(11)オフセット印刷の増加が印刷価格の低下を引き起こす
(12)1985年「キャプテン翼」のブーム→即売会参加者の急激な増加
(13)参加者の低年齢化、画材の価格低下、カラー化など印刷技術の向上、印刷価格のさらなる低下、部数の増加、経済的な安定などの大きな影響
(14)グループが解体して個人誌へ

 論はまだ続きますがこのあたりにしておきます。こういう視点でのマンガ史は同人誌界では常識なのかもしれませんが、わたしが同人誌に(ほんのちょっとだけ)足つっこんでたのは(1)のころですもんね。知らなかったなあ。

 こういった同人誌の歴史を書けるのは、あと阿島俊こと米沢嘉博ぐらいしかいないでしょう。ただし「漫画同人誌エトセトラ '82-'98」は、タイトルにも書いてますが「状況論とレビュー」ですから、作品・作家の紹介とその時点での状況分析が主です。岩田次夫のマンガ史総括は、部数増加・コスト低下という資金面をサークルの解体とからめて論じ、さらにそれは作品の変化を語ることにもなるという高度なことをやってます。お見事。

 同人誌を愛し、膨大なコレクション(およそ4トン)のために同人誌以外の本を処分してしまった著者の書棚はまさに壮観。ご冥福をお祈りします。

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Comments

たしかに、印刷の変化は同人誌作りに大きな影響をもたらしましたね。70年代末、僕の仲間たちはGペンやかぶらペンから丸ペンへいっせいに移行したのですが、それは簡易オフセットにより網掛けによる階調表現が可能になったからだった気がします。ベタの塗りむらを気にする必要があまりなくなり、マジックを使うようになったりもしました。それ以前にはタブーとされていたんですけどね。

Posted by: とおる | January 06, 2005 11:58 PM

そうですか、ペンでそんなに違いますか。かぶらペンと開明墨汁の組み合わせはもはや伝説の領域でしょうか。

Posted by: 漫棚通信 | January 07, 2005 11:01 PM

ためしに“かぶらペン 開明墨汁”でググったら、82件。少な!

Posted by: とおる | January 08, 2005 10:04 PM

12のあたりで体勢が創作から二次創作へ
変化します。元は二次創作は厭われる風潮だった。これは書き手各人が変化したのではなく、二種は根本からタイプが違います。
前者は、
漫画の場合素人の創作ではたいていヒサンな
ものしかできんことを学習して描くのをやめ、
後者はノリが軽いのでオフセット本が安く作れる状況で動き出したと考えられます。
で、前者はそれから10年ぐらい経って
ましに落ち着いた状態で本を作ったりしました。・・・以上手持ちのデータで推測。

Posted by: 砂野 | June 29, 2005 03:15 PM

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