いがらしみきお「sink」の実験
やーなマンガ読んじゃったなあ。いがらしみきお「sink」が2巻で完結。1巻が刊行されたのが2002年で、2年ぶりの2巻は、本の厚さも1巻の2倍という変則。
大学教授の山下は郊外の造成地に一戸建ての家を新築したところ。ところが、彼の周囲に奇妙な事件や人物が出現。もっとも大きなトラブルはひとり息子・高校生の駿がある暴力事件をきっかけに引きこもりになってしまったこと。その後、奇妙な事件は彼の周囲だけでなく、地域のあちこちで起こっていることがわかります。頻発する自殺や殺人、事故の陰で暗躍するのは何か。
「ぼのぼの」の作者が「劇画」で「ホラー」を描きました。ネットで連載されたもので、モニタ上でソフトを使ってモノクロの濃淡をつけた絵。薄墨でもなく、スクリーントーンでもない中間濃度は、光と影をまったく新しく表現しておりこういうのは見たことがなかった。ただしあとに続く作家がいるかどうか。
モニタ上ならモノクロよりカラーが使いたくなるでしょ。でも著者がモノクロを選んだのは、ホラーにはモノクロが似合うこと、出版を考えていたこと、新しい表現に挑戦したかったことなどが理由でしょうか。実はモニタで見たほうが「クリアな中間濃度」にはずっと良かった。紙に印刷してしまうと、かなり眠たい画像になっちゃってます。ですから著者の意図した絵はモニタ上にしかないんですが、やはりマンガは書物のかたちのほうが読みやすい。ジレンマですなあ。
と、その先進性を十分認めながら、この作品、怖いというより気持ち悪いんですよー。救いのないラストで読後感も悪いんですよー。ホラーなんだから当然と言われそうですけど。作品内で怖がるのは主に中年男なんですが、これがイヤ。ホラーで真面目なオッサンが怖がると話が深刻になっちゃうなあ。
とはいうものの、人体や建造物が○○される描写は、すごく斬新です。
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