ぽっこかぼっこか
モニタ上の字ではわかりにくいのですが、このタイトルは「pokko」か「bokko」かと書いてあります。何のことかというと。
先日、わが家の同居人その3が図書館から借りてきた本に「学研まんが人物日本史 福沢諭吉」(1980年)というのがありまして、著者は太田じろう。あらー、なつかしい名前。あいかわらずうまい絵だなあ。学習マンガあなどるべからず。
太田じろう:1923年東京生まれ。児童マンガで活躍し1959年第5回小学館漫画賞受賞。
いっぽうBSマンガ夜話のあすなひろしの回の流れで、ネット上にある、みなもと太郎があすなひろしのことを語ったインタビューを楽しく読んでいたのですが、ここに太田じろうの名が。
・太田じろうは少年誌でお相撲さんの漫画を、幼年誌では「こりすのぽっこちゃん」を、「りぼん」では可愛いのを描き分けて(以下略)
さてここで、あれ、みなもと太郎は「pokkoちゃん」と言ってますが、「bokkoちゃん」じゃなかったっけ、と。わかんなくなっちゃいました。そこでgoogleで検索してみました。
・こりすのぽっこ(pokko):12件
・こりすのぼっこ(bokko):10件
・こりすのぽっこちゃん(pokko):13件
・こりすのぼっこちゃん(bokko):0件
ぽっこちゃん(pokko)派優勢です。いろいろ読んでみますと、
・1963年「小学一年生」には「こりすのぽっこちゃん(pokko)」というマンガが連載されていた。
・そのころに「こりすのぽっこちゃん(pokko)」というタイトルの絵本(鈴木出版)もあった。
・1958年には「こばと」という雑誌に連載されていたらしい。
・1959年の受賞作タイトルは「こりすのぽっこ(pokko)」派と「こりすのぼっこ(bokko)」派が拮抗している。でもなぜかタイトルに「ちゃん」はついてない。
・日本児童教育振興財団のサイトでは「こりすのぽっこ(pokko)」ですが、小学館のサイトでは「こりすのぼっこ(bokko)」と書かれています。ともに「ちゃん」はついてない。
印刷物ではどうか。虫プロ「COM」1970年7月号に御本人のインタビュー記事が載っていました。
高等小学校を卒業後、いわゆる「かき版屋」に就職。その後映画の看板描き。ほかにも新潮社や東宝の美術部に勤めたこともあるそうです。戦前には絵本の仕事も。
戦後「漫画自由人」に参加。井上一雄の急死にともなうピンチヒッターで少年クラブに「お山のくろちゃん」を連載開始、人気を得る。この記事にはちゃんと受賞作は「こりすのぽっこちゃん(pokko)」であると書いてあります。民放テレビでも4年間人形劇として放映されたそうです。
ネットでもやっと書影をみつけました(古書店のサイトなので、売れたら消されちゃうでしょうが)。1960年の集英社「こばと」第3巻第2号は「お正月増刊ぽっこちゃん号」、第3巻第6号は「春の増刊ぽっこちゃん号」と題されてます。
やっぱり「ぽっこちゃん(pokko)」だったか。
おそらく諸悪の根源は小学館のサイトです。ここが「こりすのぽっこちゃん(pokko)」を、「こりすのぼっこ(bokko)」しかも「ちゃん」抜きで誤記したせいで、ここから引用されるかたちでまちがいが流布したのでしょう。
このような戦後マンガ史の重要メンバーの主要作品が、こんなことでいいのか。小学館、しっかりせんかっ。
Comments
あの「なみだ目」が次の世代の「よだれ口」なんかに応用されていくんですね。
大田先生はあの歴史シリーズで「吉宗」「西郷隆盛」も描かれています。「福沢諭吉」が多分絶筆になった筈です。漫画史に語り残したい巨人ですね。
では〆切り5時間前の修羅場なので(ナニやっとるんだ)。
Posted by: みなもと太郎 | December 17, 2004 12:19 AM
コメントありがとうございます。「なみだ目」といいますと、目と涙のしずくをつなげてひょうたん型に描く手法ですね。「福沢諭吉」でも数ヵ所出てきてました。
Posted by: 漫棚通信 | December 16, 2004 09:45 PM
victory!(笑)
ちなみにお相撲さんのマンガは「出世がんた山」
大田じろう氏は「なみだ目」の発明者であろうと
私は考えております。
Posted by: みなもと太郎 | December 16, 2004 01:34 PM