安彦良和の選択:アニメよりマンガ
先日放映されたBSマンガ夜話、安彦良和の回のため、「アリオン」と「虹色のトロツキー」を集中再読しておりました。安彦マンガじゃ二作とも、主人公何もしないで流されてるばかり、といった感想はさておき、安彦良和のように絵がやたらとうまくて語りたいお話を持っているヒトは、アニメよりマンガを選ぶのだなあ。
「完全復刻版 安彦良和画集」という本があります。元版は1981年に発行されたもので復刻版が1998年。ガンダム放映が1979年、同年「アリオン」連載開始、小説「シアトル喧嘩エレジー」発行が1980年。この本の発行のころは「80%アニメーター」だったと。
復刻版発行時の著者インタビューが載ってまして、「今は、漫画家?」と問われて「100%漫画家」と答えてます。「どっちがいいの?」という質問には、
・それはもう、全然今のほうがいい。それはこういうことなんだけど、辛かった。悪夢みたいな時期もあった。アニメには本当にいろいろ教わったしいろんな人にお世話になったけど、俺ってやっぱりあの世界には向かない。それはもうはじめっから感じてたから。
・わがままだからね俺って。やりたいことやりたい。やりたくないことはいや。
要はアニメではやりたいことがやれなかったが、マンガ家としての今はそれができる、ということでしょう。商業主義を非難されながら、マンガというフィールドに今でもそれだけ作家的自由が残されている事は喜ばしい。
この本には子供時代の習作マンガの一部が掲載されています。習作とはいえ、大学ノート2冊に描かれたもので堂々たる長編でちゃんと完結しています。
タイトルは「遥かなるタホ河の流れ」。おお、タイトルからして大河ドラマっぽいぞ。小学三年からマンガ描き始めて10年、これが最後の「ちゃんと終まいまで描いた作品」と書かれていますから、高校三年ごろか。となると著者が1947年生まれですから1965年ごろのもの。
鉛筆描きじゃなくて、ちゃんとペン入れしてます。絵柄は横山光輝調ですが、デッサンきちんとできててたいしたもの。セリフは縦書きなのにページが左から右へ進行する変わった体裁です。
スペイン内乱を舞台に男女の悲恋を描いた(らしい)作品。安彦良和は劇画と出会わなかったように書かれていますから、この作品も深刻な内容を横山光輝の絵で描いたもの(らしい)。これが後年の、あの絵で「トロツキー」のようなお話を描く、というアンバランスさの萌芽だったのでしょうか。
○おまけ:安彦良和から見た富野ソーカントクのこと
・頭こそ悪かろうはずはないが彼は御世辞にも器用ではなく(略)分別は世間的に見て並以下であって、我田引水の傾向が顕著だからそうそう話の通じ易い相手でもない。
そうか、並以下か。
Comments
コメントありがとございます。…プロメテウスが男…? あのライオン頭のおっさんが女でありうる展開がありましたっけ。がきんちょのセネカは、わたしは途中まで、こいつは女に違いないと思いながら読んでましたが。
Posted by: 漫棚通信 | June 20, 2005 11:02 PM
今日ANIMAXでアリオンを放映していたのですが、小学生の頃にマンガを読んだので、ストーリーは大して覚えていないものの、あまりにマンガとイメージが違ったのでネットでいろいろ見ていたらたどりつきました。
プロメテウスが男だったのにビックリした私です。なんかこんなコメントですみません。
Posted by: おすぎ | June 19, 2005 11:23 PM