新書版コミックスの黎明期
現在のマンガ単行本の標準の形は新書版といわれる大きさ。ジャンプコミックスとか少年サンデーコミックスとかの版形。おそらくどこのご家庭でも、最も多いマンガ単行本といえばこの大きさでしょう。
今でこそ、雑誌連載のマンガが、その出版社より単行本化されるのがあたりまえのようになりましたが、これは比較的新しい習慣です。新書版がまだなかった時代、雑誌連載が単行本化するのはよっぽどの人気作品に限られていました。マンガブームは新書版と一緒に始まったといってもいいでしょう。新書版のおかげで、わたしたちの書棚に膨大な量のマンガが並び始めました。
秋田書店サンデーコミックスは、現在も続いているのでご存知でしょうが、1966年石森章太郎「サイボーグ009」に始まります。もちろん009は少年画報社「少年キング」に連載されていたもの。少年サンデーのものも少年マガジンのものも、秋田書店から単行本化されたものは多い。
朝日ソノラマのサンコミックスも1966年開始。虫プロの虫コミックスが1968年開始。自社に強力な雑誌を持っていなかったこれらの出版社の新書版は、他社で連載されたマンガをまとめたものが中心でした。サンコミックスの始まりが石森章太郎「黒い風」、虫コミックスの始まりも石森章太郎の「気ンなるやつら」。石森章太郎、大人気ですね。
一方、講談社コミックスは1967年に始まり、自社で連載していた、ちばてつや「ハリスの旋風」、水木しげる「墓場の鬼太郎」など。少年画報社のキングコミックスも1967年で、望月三起也「秘密探偵JA」など。この2社は自社作品を中心に単行本化しています。
意外なのが小学館と集英社。小学館のゴールデンコミックスは1966年開始。その初期は白土三平を刊行するためのシリーズといってもいいくらいでした。「カムイ外伝」「忍者武芸帳」「カムイ伝」など。「カムイ外伝」は週刊少年サンデー連載でしたが、「忍者武芸帳」はもちろん貸本からの再刊、「カムイ伝」はガロに連載中でした。
集英社のコンパクトコミックスも、白土三平が中心でした。1966年から「サスケ」「風魔」「忍者旋風」「シートン動物記」。「サスケ」は光文社「少年」連載、「風魔」は自社の「少年ブック」連載、「忍者旋風」は貸本からの再刊。「シートン動物記」は新書版じゃなくて、ほぼ正方形の変形版。もとは小学館「小学六年生」に連載されたもので、白土三平はこの作品と「サスケ」で1963年の第4回講談社児童まんが賞を受賞していました。
コンパクトコミックスは、なぜかこの時代絶滅状態だった絵物語、山川惣治「太陽の子サンナイン」も1967年に刊行してます。
このあたりが新書版コミックスの黎明期。石森章太郎と白土三平こそ新書版コミックス初期のスターだったんですね。
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