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October 07, 2004

「薩摩義士伝」のギャグ世界

 みなもと太郎氏から、ちゃんと読まんかいっとコメントされてしまいましたので、本日は平田弘史「薩摩義士伝」の読み直しでございます。注目はギャグ。笑えてしまう、というものではなく、作者が意識してねらってるものだけをピックアップして。

 「薩摩義士伝」は1977年増刊ヤングコミックに連載開始。1979年同誌の休刊にともない週刊漫画ゴラクに移って1982年まで連載されました。結局未完のままで終了しましたが、平田弘史の絵としては最もアブラののりきった時期のもので、代表作としてはこれでしょう。

 ストーリーは実話に基づいています。宝暦4年、木曽川・長良川・揖斐川流域の治水工事を命ぜられた島津薩摩藩の難行。内部では城下士と郷士の差別・反目。斬り合いと切腹がいっぱいのお話ですが、どんなギャグがあるか。テキストは日本文芸社・ゴラクコミックス版全6巻です。

 まずは軽いシチュエーションの笑いから。ギャグというよりコメディの手法。

・侍が百姓の手伝いをして芋をもらってくる。子供が「うめえや父ちゃん またもらってきてね!」「乞食じゃねえんだ」(1巻・ひえもんとり)

・久しぶりに酒を飲む侍たち。「お〜いおいおいオイ」「泣かデンよかっがな〜」「もったいなかデン チビチビ飲も〜ッ」「おいは一晩かかってナメるんじゃ〜ッ」(4巻・やんめごろ炎魂)

・夜中に子供が次々とおしっこに。「おらも!」「おらもだ!」「おらすんだ」「ええ!!静かに行かんか!!」(6巻・厄介者)


 こっけいな絵や擬音、会話。古典的です。

・神社や寺を荒らされたときの驚いた神官や坊主、とぼけた会話をする牢番のマンガふう表情。(4巻・鳥と百舌)

・「よしよしその方らは ああせいこうせい」「この方らは こうしろああしろ」(5巻・我、無点にあらず)

・食事のときの擬音「ポリポリカリッコ!」(5巻・我、無点にあらず)

・SEXのあとの「腰が軽」くなったときの歩き方。(5巻・我、無点にあらず)

・酌婦にむしゃぶりつく侍。「ヴヒヒヒ パクッ」「イヤ〜アン モット」「そう言うなッテ!」「シツコイシト!」「ブチューッ」(5巻・我、無点にあらず)

・キスする恋人たちの上にハートマークが飛ぶことも。(6巻・激突)


 ストーリーとは離れた図解にはいろいろお遊びがあります。

・「まさしく薩摩の武士の子は幼少からカチンカチンの武士魂を叩き込まれるしきたりであった」 絵は四角い顔と体の武士の子。「作・二才クラブ」「1748年第77号」の札がついてます。カナヅチで叩かれ、「フム ダイブ カトナッタ!」 着物の柄は「カト」です。(1巻・二才教育)

・コドモの絵のような渦巻きで描かれた太陽。矢印して「太陽」と説明。(1巻・二才教育)

・「金庫の金に羽が生えて飛んでゆく様なのものだった」 実際に小判に羽がはえた群れが飛んでます。(2巻・因縁関ヶ原)

・堤防の図解。アリのように描かれた人間から出たフキダシに、音符マークやらドクロマークが。(3巻・生命塚)

・閣老が薩摩藩江戸留守居役に上意を伝える場面。閣老が読んでいる紙には「命令する文」と。 驚いている薩摩藩士の背中に旗。役職・名前が書いてある。(2巻・因縁関ヶ原)


 時代劇の中に顔を出す現代。

・議論の途中「かしこくも日新大菩薩」と言われて、みんな気をつけをして刀をささげる(ただし西洋風)。擬音に「ピタ」「ピタ」「ミンナピタッ」(1巻・二才教育)

・吉宗と尾州藩主の会話。「あんたガタガタ云うけどね 諸大名とて今は皆苦しいときなのよ! 気持ちは分かるが今は無理じゃ」「何がムリじゃ! 無理もへったくれもあるか!! 少しは尾州の立場も考えてくれよ 吉宗君!」(2巻・議論紛糾)

・風呂にはいって「旅いゆけばァン〜ァア 駿河のォ〜ォ国にニイ〜ィ 茶の香りィ〜」「という浪曲はまだ創作られてなかったは…ハハハ」(5巻・我、無点にあらず)


 もっとも現代的ギャグらしいギャグはこのふたつ。

・旅の途中の宿、集団で床につく。修学旅行みたいですが、それぞれのふとんに書いてある文字を並べてみると「おやすみ」「みんなでねよう」「しょうりゃくしてごめんなさい」「ぐっすりおやすみなさい」(2巻・長兵衛の家族)

・大きな男根が勃起したシーン。ペニスそのものは透明。「ズバリカイテハイケナイ」という字が書いてあって大きさがわかるようになってます。(2巻・長兵衛の家族)

 多彩ですねー。しかもねらってやったギャグがちゃんと成功してるから驚き。他の劇画家、小島剛夕やさいとう・たかをを思い浮かべてみても、こんなことやってるヒトはいません。むしろ初期の大友克洋のテイストに近いかも。

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Comments

ひとつ追加。薩摩の男女差別説明場面。
洗濯物、男の着物はチンコ柄。女の着物はマ○コ柄。
下ネタばっかでゴメン。

Posted by: みなもと太郎 | October 13, 2004 06:38 PM

見落としてました。1巻二才教育の一場面ですねー。男の着物はヘンな柄だなあと気づいてましたが女の着物は太陽柄だと思ってました。うーむ、お下劣。

Posted by: 漫棚通信 | October 13, 2004 07:33 PM

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