クマさんのマンガ:「ガロ」のメディアミックス
鉄のゲージツ家、クマさんこと篠原勝之、スキンヘッドと和服で最近もTV「誰でもピカソ」なんかに出演したりしてます。鉄のゲージツ家以外にも、エッセイストであったり小説家であったりするでヒトですが、以前は二次元の仕事がメインでして、状況劇場のポスターを描いたりしてました。自身のサイトで見ることができますが、いや、かっこいいなあ。
昨日、書棚の「ガロ」をあさっていましたら、クマさんが鉄に目覚める前に描いたマンガが出てきました。唐十郎原作「糸姫」(ガロ1975年11月号)。ガロにはもう一回登場してまして、1976年8月号には「におい横町」を発表。この2作は1983年青林堂から単行本「糸姫」として刊行されました。
ガロ1975年10月号の次号予告。南伸坊の文章。
・遂に出る!
唐世界の初の劇画化!
いま日本中の青少年を魅きつけて席巻する現代のパイドパイパー
「状況劇場」の総帥唐十郎と
怪人クマこと幻のガロ作家篠原勝之が組んで
ガロ第三の黄金時代へ向けて友情寄稿
待望のスーパー巨編『糸姫』70p!
巻頭から一挙掲載!!
あおってますねえ。唐十郎はともかく、篠原勝之ったってそのころのわたしは知らないもんね。で、翌11月号。巻頭二色です。タイトルページは空に月、荒野で馬に乗る糸姫。糸姫はマントをはおりサーベルを持つ。剥き出しの腕と太ももには糸が巻きつき肉がもりあがる。糸は画面外から引っ張られていますが、その先は何か不明。馬はだれかを踏み潰そうとしており、下から人間の腕が見えます。
糸の町で糸を売る少女と、その糸を使って彼女のまぶたを手術する美容外科医。少女をたずねて糸の町を訪れた兄。唐十郎らしくセリフは難解。絵はシュール。ああ、わからんっ。雰囲気と意欲は伝わってきますが、残念ながらマンガとしてはあまりに洗練が足りません。唐十郎のセリフに引っ張られすぎたのか、絵に比べフキダシの分量が多すぎる。描写はコマとコマの間の飛躍が多かったり、逆に無意味なアップのコマがあったり。タイトルページの絵は抜群にいいんだけどなあ。
その号の南伸坊の編集後記。
・今月巻頭は、状況劇場の総帥唐十郎氏と怪人篠原勝之氏の熱情で70頁一挙掲載の友情出演。9月20日より公演の「糸姫」にぶつけて、ガロ第三の黄金時代にテコ入れを戴いた。一ト月70頁の大作は気まぐれで出来る量ではない。初めての劇画に全力をつくしてくれた篠原氏、惜しみなく協力をいただいた唐十郎氏の友情に、感謝します。
そしてさらに翌12月号の編集後記。
・11月号巻頭を飾って話題をさらった「糸姫」の掲載記念パーティーが友人有志で開かれた。
って、単なる宴会だったみたいですけど。このころの状況劇場の役者は、大久保鷹・不破万作・根津甚八・十貫寺梅軒・小林薫など。そしてこの号にはそのとき公演中だった状況劇場「糸姫」の広告が。おお、なんと「糸姫」はガロが地味に展開したメディアミックスだったんですね。状況劇場と組むところがいかにもガロ。
篠原勝之は翌年発表した「におい横町」になると描写が格段に進歩して、ちゃんとマンガとして読めるようになります。実はこちらのほうがずっとデキがよろしい。女を強姦して殺し、ローソクにしてしまう男のお話。篠原勝之のマンガはもっと読んでみたかった。
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