吉田光彦「ばく食え」←どうして文庫なの
イラストレーター・吉田光彦のマンガ家デビューは「ガロ」1975年8月号でした。「殴者(ボクサー)」16ページ。オープニングは自転車をこぐ牛乳ビン。ミッキー・マウスやらメンソレータムの看護婦さんやらエイトマンがでてくるポップな作品でした。ちなみにこの号では、渡辺和博がデビューしたりしてます。
吉田光彦は、1981年から1990年までに「ペダルに足がとどく日」「視感」「エンドレス・パズル」「夢化色」という4冊の短編集を残して、マンガの仕事をやめてしまいました(実はこの後4冊の私家版が出版されていたそうです)。
彼の作品群は土俗的ポップとでもいいましょうか、佐伯俊男・丸尾末広・つげ義春・赤瀬川源平らのエッセンスを混ぜたような印象。わたしの手許にある本は「エンドレス・パズル」と「夢化色」ですが、これらに収録されている作品は「SMスピリッツ」「SMスナイパー」「コミックアゲイン」「銀星倶楽部」「漫画ウインキ」などに掲載されたもので、エロくてグロいものが多い。1970年代演劇でエログロと前衛が接近しましたが、少し遅れてマンガの世界ではニューウェーブのひとりとして吉田光彦がエログロ・前衛・ポップを合体させた作品を発表していました(彼自身はニューウェーブなんて知らないよと言うでしょうが)。
吉田光彦ひさしぶりのマンガ作品集が「ばく食え」です。すべて高橋克彦の小説をマンガ化したもの。伊藤潤二とは一味ちがう怪談をどうぞ。
ただしこれ、祥伝社文庫なんですよう。マンガ文庫の存在意義は認めないわけじゃありませんが(多くは三次使用なので昔の作品が読めるとか、書棚のスペースが小さくて助かるとか)、ダメでしょ、吉田光彦の作品集を最初に文庫で出しちゃ。ああ、せっかくの絵が、小さいっ。
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