楳図かずおに聞く:インタビュー/対談もいろいろ
楳図かずおは語られることの多い作家です。彼はホラーとギャグが紙一重であることを実作で証明しました。楳図かずおの少女マンガがいかに怖かったか、「まことちゃん」がいかに笑わせてくれたかをみんな語りたくてしょうがない。その上「わたしは真吾」「14歳」という、ストーリーを追いかけてるだけではダメよ、と言わんばかりの難解な作品を発表。この2作を謎解き、深読みするだけでもどれだけ面白いか。
マンガ家としては休業中の楳図かずおですが、多くのインタビューなどで積極的に自身の言葉で発言しています。最近まとめてインタビュー/対談を3つ読みました。
「別冊宝島 楳図かずお大研究」発行は2002年でちょと古い。発行のきっかけはこの年放映されたTVドラマ「ロング・ラブレター 漂流教室」でしょうか。ここに「楳図かずおロングインタビュー」が掲載。インタビュアーはミステリ作家・二階堂黎人。元・手塚治虫ファンクラブ会長ですから、マンガにくわしいし、マンガについての発言も多い。楳図かずおのデビュー前、貸本時代、雑誌時代と順にきっちり質問していきます。手塚治虫の影響から抜け出すのをいかに模索したかとか、少女フレンドで里中満智子が原稿料3000円だったとき自分は1100円だったとか、楳図かずおも楽しそうに語っています。もっとも固有名詞が多く、読んでいて楽しい。本全体の作りも、執筆陣が大原まり子・ひかわ玲子・柴田よしき・児嶋都・図子慧・すがやみつると実作者が多く、娯楽として読めます。
2つめ「KAWADE夢ムック 文藝別冊 総特集・楳図かずお」は2004年6月発行。「スペシャルロング対談 僕は楳図かずおという船に乗って漂ってるだけ 楳図かずお×宇川直宏」ここではインタビューじゃなくて対談と称してます。宇川直宏は、スミマセン、わたし今回はじめて名を知りました。デザイナー、ビデオディレクターなどをしてる芸術家。猫目小僧(アニメじゃなくて、紙芝居か二次元人形劇みたいなもの)のLDボックスデザインもしてたそうです。
芸術家同士のお話ですから、わかりづらいことはなはだしい。話題があっちこっちトンでいってまして、とくに宇川の発言「それってユングの集合的無意識なのでしょうか?」「ヴァイブレーションですか?」「現実としてのボーダーは純粋に五感で体験するリアリティーに準じてて、ここから先が妄想っていうか、ファンタジーっていきなりいっちゃうんですね」←ゴメンナサイ、意味不明でお手上げです。
その他の記事は「楳図かずおの貸本時代」の特集がなかなか。少年探偵・岬一郎シリーズをまとめて紹介してくれてるのはいいですね。そしてカラーで掲載してある、楳図かずお中学生時代の肉筆同人誌「漫画展覧会」。これはスゴイ。楳図かずおの絵のうまさとセンスの良さがよくわかります。
3つめ「ユリイカ 2004年7月号 特集・楳図かずお」の対談は「世界が終ったとき、子どもがはじまる」。お相手は岡崎乾二郎。このひとも美術家・造形作家で芸術家ですが、テーマを「子供」にしぼったせいか、話がかみあってます。
「子供」は楳図マンガの大きなテーマで、怪奇マンガの多くは子が親を怖がる話、「漂流教室」は子供のサバイバル、「まことちゃん」では大人も子供もない世界、「わたしは真吾」は子供の恋愛、そして「14歳」はタイトルどおり子供の話。同じ本の中で高橋明彦は「楳図作品の幾つかが、大人になることを拒否している」と書いていますが、ここをつっこんで語り合えば、もっと興味深くなったんでしょうが、それは対談ですることじゃないかも。対談のコピーに「ブッシュはまことちゃんを読め!」とあったり、編集部が楳図かずお特集をくんだのは、現実世界に14歳の犯罪がおこったり狂牛病・鳥インフルエンザが流行したり、楳図マンガが現実を先取りしていたから、というようなことを言ったりしてますが、確かに現実社会との一致を接点としたほうが、対談としては正しいんでしょう。
文藝別冊とユリイカはほとんど同時発売だったので、執筆者はまったくダブっていません。後者のオトクなところは、高橋明彦作成の年譜(小伝記として読めます)と(ほとんど完全版の)作品目録が載っているところ。労作です。
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