手塚治虫のタカラヅカ
中野晴行の新作「マンガ産業論」が話題になってますが、まだ手に入れてません。でもって、最近読み終わったのが著者の前作「手塚治虫のタカラヅカ」(1994年筑摩書房)。これも図書館で借りたものでして、「漫棚」のタイトルが泣きますね。さらに前作「手塚治虫と路地裏のマンガたち」についてはコチラを。
「手塚治虫のタカラヅカ」はタイトルがいいなあ。そして装幀が美しい。図書館に返すのやめようかしら。自分の本じゃないですが、書影撮っときますね。これは「双子の騎士」オープニングのもろ宝塚少女歌劇風レビューシーン。色もオリジナル雑誌版のようです。
内容は手塚治虫作品に対する宝塚という土地柄、宝塚少女歌劇の影響を論じたものです。宝塚と宝塚少女歌劇の歴史が6割ぐらい、あとの4割が手塚少年時代の話と手塚作品の中の宝塚の話。
関西在住の著者がその利点を生かし、関西在住のいろんな人にインタビューしてます。宝塚ファンの芥川賞作家・阪田寛夫も登場しますが、彼こそ主婦の友社版「ぼうけんタンタン」で、スカタンな日本語訳をした人であります。
手塚マンガのなりたちについて、戦前マンガの影響や、映画、アニメーションなどについては語られてきました。加えて昆虫採集というこりゃびっくりのものもありました。宝塚少女歌劇の影響については以前から指摘はされてきましたが、この本ほどきちんと語られたことはなかった。葦原邦子とロック・ホームが似ているなんてのは、言われてみて初めてぽんと膝を打ちますね。
とはいえ、実作品のそれぞれのシーンに対する論評がもっと読みたかった。少女クラブ版リボンの騎士で博士と乳母が会話しながら歩く平凡とも思われるシーン。これこそ舞台だ宝塚だという指摘はお見事。こういうのがもっとあればなあ。
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