頭にピンクの花が咲く(その1)
数年前のNHKアニメに「あずきちゃん」というのがありました。原作・秋元康、小学生が主人公の生活アニメ、かと思いきや、これがエライしろもので。主人公のあずきちゃんは小学生ながら、朝から晩までオトコのことしか考えていないというトンデモない人物。それほど美人じゃなくて性格も優柔不断、そこらにいるフツーの女の子ですが、頭の中にピンクの花が咲き乱れ。ひたすら如何にしてオトコと恋愛するかを考えてる。小学校を舞台にしながら毎回恋愛以外のテーマがないという、この世のものとは思われない展開のアニメでした。
原作は「なかよし」掲載で絵は木村千歌。アニメが小学生時代だけを描いたのに対して、マンガの方は5年間連載で小学5年生から中学3年まで。内容はアニメと同じですね。中学生になるとなぜかふたりの男からせまられてモッテモテになりますが、まあそれは言うまい。今もネットにアニメ絶賛のサイトがあるのが信じられませんが、評価はひとそれぞれですなあ。
で、このあずきちゃんが成長すると、矢沢あい「NANA」の主人公のひとり、奈々になるんですね。奈々もただただオトコと恋愛することしか考えていない人物。わたしは累計1400万部のベストセラーの読者のみなさんに問いたい。これでいいのか?
奈々は、内田春菊のいうところのいわゆる「困ったちゃん」で、上京して半年で3人の男を乗り換える、仕事はおざなり、遅刻はする、外出したら帰ってこない、仕事中にあっちの世界に行ってしまって男のことを考える、友人には迷惑かけまくり、妊娠してあっさりできちゃった結婚して白金の豪華マンション住む。ホントにみなさん、これでいいのか?
作者が奈々を全面肯定しているわけじゃないとは思うんですが、じゃあこの女どうなんだよっ。少女マンガはわたしの弱点でして、文法はわかるにしても、数を読んでないし、恋愛モノがだめなんだよう。読者がこのマンガのこの主人公のどこに共感してるのか、それとも反感持ちながら読んでるのかがわかりません。共感できない主人公の作品がなんでベストセラーになるの? じゃあやっぱりみんな主人公に共感してるんだ。あずきちゃんに共感したように。ドジでのろまな亀だけど。これが私。愛される私。(うーむ、えらくマズイことを書いてるかもしれない。)
恋愛至上主義の女性の代表・あずきちゃんと読者の距離は全くありません。同化してます。「ハッピー・マニア」の重田加代子と読者の間には彼女を笑えるだけの距離があり、コメディとして受け入れられる。読者と奈々の距離はその中間ぐらいなんでしょうか。共感しつつ、反感もちつつ?
「NANA」にはもうひとつ、ちょっとなあと思われる構造的な問題も。
以下次回。
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