クロベエもいた
「クロベエ」といって何を思い浮かべるか。時代劇ファンなら、忠臣蔵の大野九郎兵衛か。マンガ読みなら、藤子Fの禁断の「ジャングル黒べえ」(べっかんこー)か藤子A「黒ベエ」のどちらかが出てくるでしょう。チェッカーズのドラムにもこういう名の人がいましたね。
でも最も人気者だったのはコイツ。田河水泡が描いた黒ウサギの「凸凹黒兵衛」。マックロなウサギで、もちろん戦前マンガの登場人物ですから、服を着て人語をしゃべります。ガールフレンドは白ウサギの白ちゃん。
田河水泡のキャラクターとしては、なんといっても「のらくろ」が超有名。少年倶楽部という巨人雑誌に長期連載。次いで「蛸の八ちゃん」でしょうか。凸凹黒兵衛はあまり視野にはいってなかった。なんせ連載されてたのが婦人倶楽部(1933年〜1938年)ですからね。こういう雑誌に連載されてるマンガに人気が出るとは考えにくいじゃないですか。
ところが、前回話題に出した「日本製ベティ・ブープ図鑑」を見ると、黒兵衛いっぱい登場してるんですよ。戦前日本子供マンガの人気キャラクターといえば、まずのらくろと冒険ダン吉がトップ2。「正チャン」「ノンキナトウさん」「団子串助」は大正時代のデビューですからちょと古い。講談社系の少年倶楽部や幼年倶楽部に連載されていたのが「タンクタンクロー」「コグマノコロスケ」「日の丸旗之助」ですが、黒兵衛はおもちゃ類への登場が彼らよりも多いように思われる。もしかすると、子供たちにとって人気ナンバー3だったのか、なんて考えるんです(もちろん、ミッキー・ベティ・ポパイを別格として)。のらくろの陰に隠れてマンガ史の本にもあまり出てきませんが、黒兵衛、意外とスターだったのか。
この当時のマンガとして復刻もされ、手塚治虫の映画的手法の先駆とされる宍戸左行「スピード太郎」(1930年〜1933年、読売サンデー漫画、よみうり少年新聞)は、少なくとも「日本製ベティ・ブープ図鑑」コレクションのおもちゃには登場しないようです。子供たちの間での人気はどうだったんでしょ。
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